税務レポート「税務調査のポイント…減価償却資産と修繕費」
税務調査で問題になりやすいポイント
解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男
税務調査において注目される減価償却資産と修繕費について、まとめたいと思います。
減価償却資産では、①取得価額 ②償却開始時期
修繕費では、その支出の内容により「資本的支出」として資産に計上すべきものがないか?などが問題になりやすいポイントです。
減価償却資産
1.減価償却資産の取得価額(付随費用は取得価額に含まれているか?)
購入した固定資産の取得価額は、原則として、その資産の購入対価と事業の用に供するための直接費用(設置費用・試運転費用など)が含まれます。付随費用(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など)も取得価額に算入されます。
ただし、次に掲げるような費用については、取得価額に算入しないことができます。
①次のような租税公課等
・不動産取得税・自動車取得税・登録免許税・新増設に係る事業所税他
②固定資産の使用開始前の期間に係る借入金利息
③建設計画の変更に伴い、不要となった調査、測量、設計、基礎工事等に係る費用の額
2.「事業の用に供した日」から減価償却が可能
「事業の用に供した日」とは、一般的にその減価償却資産の属性を本来の目的のために使用を開始した日をいいます。機械等についてなら、据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日になります。事業供用日が問題となるのは、設備投資減税等で100%の特別償却や税額控除の対象となる機械や備品等について、決算日までに事業の用に供されているか否かで税額が大きく異なることとなるからです。
3.少額の減価償却資産の取り扱い
(1)少額の減価償却資産として、損金経理した金額が損金の額に算入されます。
①使用可能期間が1年未満のもの
②取得価額が10万円未満のもの
(2)一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産については、その全部又は一部の合計額を一括し、3年間で償却する一括償却資産を選択することができます。
(3)中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
資本金1億円以下の中小企業者については30万円未満の資産を令和4年3月31日までの間に取得し、事業の用に供したものにつき合計300万円までは、即時償却が可能となります。
修繕費
1.修繕費と資本的支出の区分
調査では、修繕費として損金計上されているものの中に、資本的支出となるものがないかについて、注目されます。
固定資産を所有している場合、その資産に維持・管理のため支出した費用が、修繕費か資本的支出であるかの区分は難しいですが、一般的には、固定資産に付加的な機能(使用可能期間の延長や価値の増加など)がプラスされた部分を資本的支出とし、それ以外の通常の維持・管理費用が修繕費となります。この区分は支出金額の多寡によるものでなく、実質で判断します。
2.資本的支出か修繕費が分からないとき
実質で?といっても、判断が難しい事例もあります。その場合定められた判断基準に従って考えることができます。
①修繕費となる場合
・かかった費用が20万円未満
・3年以内の周期で修繕
・支出した金額が60万円未満、または修理した資産の前期末の取得価額の10%相当額のいずれか低い金額が修繕費となります(残額は資本的支出)
・通常の維持管理のためのもの(原状回復、消耗品取替)
②資本的支出となる場合
・資産の価値を高めるもの(増築、用途変更)又は耐久性を増すもの
③7.3基準
継続して「割合区分」という方法により、資本的支出と修繕費を7:3の割合で処理することができます。「割合区分」においては「支出金額の30%」と「前期末取得価額の10%」のいずれか少ない方を修繕費、残りを資本的支出として処理することができます。
3.被災資産(災害により被害を受けた固定資産)の資本的支出と修繕費
①被災資産について現状を回復するために支出した金額は修繕費になります。
②被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止のために支出した金額は、修繕費と処理したときは、認められます。
③被災資産について、修繕費か資本的支出か明らかでないものがある場合30%相当額を修繕費とし残額を資本的支出とする処理が認められます。
処理について、悩まれた時は担当者にご相談ください。
2020年12月1日
日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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